PROLOGUE 戦塵せんじんけむる銀河」

  無数の星々が ひしめく、宇宙の海。
  しかし、その間に横たわる空間は、想像を絶する広がりを持つ。
  既に、恒星間航法は確立されて久しい。
  人々は、銀河系内の ほぼ総ての恒星系に広がり、少なからぬ他銀河との交流すら行い、揺るぎない繁栄を築きつつあった。
  だが。
  その果てしない星々のへだたりは、再び人の心の歪みを解き放つ事となった。
  前時代的な――ただそれは、惑星の海と宇宙の海という違いはあったが――海賊行為の横行、資源衛星、惑星を巡る利権闘争、増え過ぎた事による主義、主張の食い違いの表面化……。
  それは、さながら暗黒の時代。
  少なからぬ星系が、それぞれに独立した星間国家を名乗り、互いに覇権を競い、無為な争いを繰り返していた。
  付加するならば、一惑星内においても、反政府組織なり何なりがうごめいているのが、ごく当たり前になっていた。

  時は、人類が銀河に進出した年を元年とする、銀河歴1300年代の末期。
  希望を胸に一つの惑星から旅立った者達の子孫は、それすら忘却の彼方へ押しり、各々が銀河宇宙の盟主たらんと、みにくい争いを繰り返していた。
  後に言う、第二次 銀河争乱であった。

  かつて、祖先達が宇宙に広がり出した、そんな頃の出来事――
  当時、人類は、初の宇宙戦争を経験しようとしていた。
  そんな折。
  未知の異文明よりの来客が、こつ然と現れる。
  彼らは、白銀に輝く荘厳なる大宇宙戦闘艦に乗じ、遥か数万光年の彼方から来たという。
  彼らの有するテクノロジーは、全てと言ってよい割合で、未知であり、そして理解の範疇はんちゅうを超えていた。
  当初、対立する勢力は、その圧倒的な力を自陣営に引き込む為に奔走ほんそうしたという。
  しかし。
  幾度目だったろうか。
  その力を目の当たりにした者達は、過ぎた力が、自分達を焼く――そんな悪夢を見るようになっていった。
  愚かなことに、善意から提供されたテクノロジーを使い、人類は異邦人達の“力”としての側面をコピーし、あまつさえ その牙を異邦人達に対していたのである。
  ……結果は、言うまでもない事だろう。
  “知っている”事と、“理解している”事とは、根本的に次元の違う話である。
  その差に、人類は気が付くことが出来なかった。
  その差に敗北した者達は、消滅した。
  だが この戦いは、異邦人達にも少なからぬ損害をもたらした。
  ごく少数の非戦闘員を除いて、異邦人達は現れた時と同様、忽然と姿を消す。
  その後。
  銀河間移動を可能にした人類は、贖罪しょくざいの為、残された異邦人達を母星へと送り届ける。
  それを契機として、その惑星との交流が始まると共に、人類は爆発的に勢力圏の拡大を開始した。
  そして、宇宙の闇を切り裂き羽ばたいた白銀の翼は、伝説となった。
  ロック達の直面している、銀河戦争をさかのぼる事、1200年の昔の出来事である。
  「帰りたい」
  望郷の念。
  人工知能が語る、余りに人間臭い言葉に、だが、ロックは何故か心かれる。
  “二人”は、その惑星を目指す。
  その惑星の名は――


1話 「ガイン」

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