……その物語は確か、A.D.(西暦)にして2078年に始まったように思う。
何月の何日なのか、そこまではっきりとした事は憶えていないのだ。
とにかく、その頃の世界はヒドいものだった。
“第二期世界の終焉”(この辺りの“呼び名”は人それぞれのようだ。人によっては、“神魔大戦”などと呼称する者もある)の名残“黒い球体”は、触れたもの全てを悪意の塊に変えた。
もちろん、それはニンゲン様だって例外じゃなかった。
そして、そこに存在していた、かつてブンメイと呼ばれたものものを、ことごとく破壊してしまったのだ。
無論、その間の犠牲者は、第二期ラグナロク時の聞くのも嫌になる程の数字からすれば、些細なものかも知れなかった。
だが、そうして地獄の底に叩き落とされた人類が、この先何十年もの間、更なる地獄を見るなど、誰が想像し得たろう。
仮に想像し得たとしても、そんな事実を、誰が信じたいなどと思うだろうか。
……しかし、現実は、人類の甘ったれた願望などには目もくれず、混沌への道をひた走っていったのだ。
そうした中、この物語は紡がれた。
本当に、歴史の流れから見れば、酷く些細な出来事……そんな物語ではあるが……ね。
〜とある街の片隅にて、一人の男が酒を片手に語る〜
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