PHASE_1 折られた白銀の翼」

  常識などという言葉は、まやかしに過ぎない。
  常識とは、常にる と書く。
  あまねく天下に、誰か一人でも知らぬ者が居るならば、その時点で“常識”とは言えないのだから。

  時はさかのぼる。
  嵯峨の力の暴走により、スヴェード・ロドラームの艦隊が消滅した その場に、御堂は居た。
  後方の艦で監禁状態となっていた御堂は、その異常にいち早く気付いた。
  自分が去って後の、G・サジタリアスの動向は、ある程度 把握していた。
  少なくとも嵯峨ならば、艦を撃沈するような攻撃は加えない筈だった。
  だが、今の御堂には状況を知るすべが無い。
  この艦が戦っている相手も、前衛なのか後衛なのか、艦隊の どの辺りに居る艦なのかも、判然とはしない。
  今この瞬間にも、沈む可能性が無いとも言い切れなかった。
  一先ず出来る事を探した御堂は、部屋の隅に扉を見る。
  中には数着の宇宙服。
  (着ておくべきか、それとも――)
  判断に迷ったが、着込む事にし、足を通そうとした刹那。
  激しい揺動に さらされる帝国艦。
  何を思う間もなく、出入り口側の壁面が、御堂を吹き飛ばした。
  「ッ!?」
  痛みを感じ、視線を落とすと、右脇腹に何かの破片が突き刺さっていた。
  破片そのものはしたる大きさではなかったのだが、どこかに引っかけ、引きってしまったのか、深くはないものの、傷口は かなり広範にわたっていた。
  何の部屋だったのかは判らないながら、更に探すと、応急処置キットらしきものが見つかる。
  或いは、航宙艦というものならば、こういうものなのかも知れなかったが、御堂に それを判断する材料は無かった。
  応急処置を済ませ、宇宙服を しっかりと着込む。
  そうして ようやく部屋を出た御堂は、我が目を疑う事になった。
  御堂の立つ位置から先には、艦体は無かった。
  左右を見回すと、全てが そのラインで引き千切られたようになっており、改めて、九死に一生を得た事を御堂に実感させた。
  だが その時、我に返り、次の行動を決めあぐねていた御堂の意識を、遅れて来た再度の誘爆が掻き消した。

  影の首領達を一度に失い、浮足立つかに思われた連合だったが、大方の予測に反して、その動きは異様な までに素早かった。
  ほんの数日の間に、帝国との間で停戦協定が結ばれる。
  厭戦えんせん気分が蔓延まんえんしていたのかも知れない。
  しかし、再編成の済んだ連合軍は、進発した。
  それは無論、帝国との戦闘の為ではなかった。
  目的は――G・サジタリアス。
  皮肉にも、その存在が帝国と連合を結びつけたのだ。
  ただ、その代償として、彼らは双方から追われる身になってしまった訳だが。
  「……リー司令」
  「スゴウさんか。何だい?」
  「どう思いますか」
  「そうだねぇ……」
  第二艦隊 旗艦、その艦橋。
  リー、そしてスゴウ。
  二人は、艦隊を壊滅させてしまった責を追及され、リーは第二艦隊司令へ、スゴウは その司令補へと、降格させられていた。
  「証拠映像を見る限り、言い訳の しようが無いよね」
  「ですが――」
  スゴウの中には未だ、彼らが そんな“大それた事”をしたなどとは、信じられぬ思いがあった。
  接触を持った二人だからこそ、とも言える。
  なおも言いつのるスゴウを、挙げた手で押し留めるリー。
  「僕らは軍人だよ。下命されれば従うしかない」
  根本的問題を持ち出され、黙ってしまったスゴウに視線を投げ掛け、リーは、声のトーンを落として続ける。
  「……僕らに出来る事は、現場での判断だけだよ。そう、、ね」
  「! ……了解です、司令」
  そこに含まれるものを、スゴウは汲み取ったようだった。
  だが そうは言ったものの、スゴウには、今一つ気懸きがかりな点が あった。
  ウォンの事だ。
  あの一件以降、G・サジタリアスとは連絡が付かず、その行方も知れなかった。
  軽はずみな事を するような者達には見えなかったが、首都星での事件が彼らの手によるものと聞かされれば、心配するなと言う方が難しい。
  スゴウには子が無く、ウォンは身寄りを失っていた。
  そんな事情もあり、スゴウと その妻は、ウォンを我が子の様に見ていたのだった。
  もっとも、ウォンにしてみれば、どう思っていたかは判らなかったが。
  スゴウの脳裏に、拷問されるウォンの姿が想起される。
  (あの子に何か あれば――ただでは済まさん)
  それは見当違いというものだったが、無論、スゴウには知る由も無い。
  「司令、総旗艦より入電。第二艦隊はデボンス星系方面へ進発されたし、との事です」
  「グエン司令は、薄く広く網を張るつもりかな?」
  「しかし、それでは――」
  「何か、その先の考えが あるのか無いのか……まずは お手並み拝見、だね」
  泊地より抜錨ばつびょうしたリーの第二艦隊は、一斉に回頭し、順次 主機関に点火、デボンス星系へ向けて発進して行った。

  一方の帝国側では――
  「では、こちらからはクーゲル殿のみを派遣するという事ですかな?」
  「それで良いのか? 連合は全軍総出で血眼になっているらしいぞ。我が方も それなりの数を出すべきではないのか」
  「そうだ、先に連合に発見されて主導権を握られてしまえば、その後の諸々にも響く事は間違いないだろう」
  「そうは言うが、事は連合領内の話。こちらは全軍を出すなど出来ぬ相談だ。それこそ問題になろう」
  「そこまでは言っていない。ただ、1艦隊では少ないのではないかと言っている。我々とて、艦隊一つを沈められているのだぞ」
  「判っている。判っているが――」
  帝室会議がふんきゅうしていた。
  停戦協定が結ばれたとはいえ、連合から捜索への協力要請があった訳ではない。
  G・サジタリアスを捕えたいのは、あくまで帝国側の要望だ。
  「めておるな」
  「陛下!?」
  その一声に、ざわついていた会議場は一瞬にして静まり返る。
  ライガルド帝国 初代皇帝、ネメアス。
  齢70も目前だが、かくしゃくとしたたたずまいは、皇帝としての威厳を保っている。
  この10年ほどは、議員団に委任し、滅多に姿を見せなかった皇帝が、議場へ入って来る。
  「陛下、如何いかがしました。何か問題でも……?」
  「いや、廊下の方にまで声が聞こえて来たものでな」
  「そうでしたか。失礼致しました」
  「気にする事ではない。それがくんの仕事だ。それで、どうだ。この件、クーゲルに加え、ラクサスを出すというのは。あの二人ならば、良い仕事をしてくれよう」
  「は……しかし」
  「貴君等の仕事は、この件に限るまい。1つ位、余に任せて貰っても良いのだぞ」
  「陛下が そうおおせられるのであれば」
  「うむ」
  鶴の一声、帝国からの派遣艦隊の陣容が確定した。
  連合領に ほど近いジュラッグ星系にて、その報を受け取ったクーゲルは、即座に進発を下命する。
  その胸に去来するものは――

  嵯峨を失ったことにより、最大の防御システムであるディメンジョン・クリスタルを含む、大半の機能が使用不能となったG・サジタリアス。
  行方不明の嵯峨の事も もちろんあったが、ふねを降りた者達を残して、去る訳には行かなかった。
  しかし、戦局は そんな事情など お構いなしに、襲い来る。
  艦を降りた者達を救出するすべを見出せぬまま、連合領内を右往左往する事しか出来ず、見つかる都度、激しい攻撃にさらされるG・サジタリアス。
  現時点では、性能差により、辛うじて逃げ切っていたG・サジタリアスだったが、傷付いた艦体を補修する事も ままならず、M13銀河を さ迷う日々が続く。
  破損するまで判らなかった事だが、どうやら自己修復機能がそこなわれていたのは、コスモ・シャドウだけでは なかったらしい。
  G・サジタリアスは、その乗員共々、疲弊し切っていた。
  「く……うッ、こっちが反撃しねえのを判って、がんがん突っ込んで来やがって」
  「だけど、今日も何とか逃げ切れたね……」
  「……済まねえ、優輝。代わって やれりゃいいんだけどよ」
  志賀とは比べ物にならぬ程に、優輝の疲労は色濃い。
  嵯峨が不在である以上、優輝が艦を操るしかないのが実情だった。
  「それでも、 以外は、レイジやマセラトゥさんが代わってくれてるから。大丈夫さ」
  「ッ」
  気丈に笑顔を見せる優輝に、志賀の拳が握り締められる。
  「宜しいでしょうか」
  「?」
  「一先ず身を隠せる場所に、心当たりが あるのですが――」
  ウォンが立ち上がり、星間図の一点を示した。
  そこに表示されていた星系が、更に拡大される。
  それは、G・サジタリアスも一度はかすめ飛んだ、ペルムス星系。その第三惑星だった。
  「この星は有人惑星なのですが、地表の7割が水域で覆われており、人口も多くありません。また、天球上で最も南に、つまり、最も帝国領から遠い場所に位置する関係で、軍の施設も ありません。監視システム程度ならば存在する可能性は ありますが……この広大な海域に潜伏せんぷくする事が出来れば、時間は稼げると思います」
  全領域にわたり活動可能な、G・サジタリアスならではの提案と言えた。
  「なるほど、そりゃ名案だ。優輝、どうだ?」
  「破損区画の隔壁は閉じてある。潜水行動に問題は無い筈だよ」
  「後は、監視システムのたぐいを どう かわシて、惑星に侵入スるか、でスね」
  ディメンジョン・クリスタルが展開できるならば、探知アクティブ型だろうと検知パッシブ型だろうと、探知装置センサーに引っ掛かる事はない。
  だが現状、ディメンジョン・クリスタルは機能不全におちいっていた。
  「あるかどうか判んねえもんに、びびってる場合じゃないぜ。とにかく行ってみよう」
  「まったく……。だけど、志賀の言う通りかも知れないね。様子を見てからでも遅くは ないかも」
  直ぐにメインエンジンが起動され、G・サジタリアスは その場を離れた。
  しかし、HFドライブで跳べない以上、その道行みちゆきは困難が予想された。
  想定される連合軍の存在を避ける為、一旦、目的地に直交する軌道コースり、そこから加速を掛ける方法が採られる。
  そこから数日、飛びに飛んだG・サジタリアスは、運にも助けられたのか、連合の追跡をかわし、ペルムス星系へと侵入した。

  星系へ侵入したG・サジタリアスは、第四惑星の軌道を越えた所で停泊、サーチ・ホーンを偵察に出す事になった。
  「先輩、僕なら大丈夫ですよ。サーチ・ホーンの搭乗時間なら、誰にも負けませんし」
  僕を差し置いて、自分が様子を見に行くと言い出した先輩に、僕は胸を張って見せた。
  もちろん、半分以上は虚勢きょせいだ。
  こんな状況下で、一人で出掛けるのだ、連合軍に見つかりでもしたら、ただでは済むまい。
  それでも、先輩を行かせて、万が一何か あったのでは、僕等は路頭に迷うしかない。
  どうあっても、行かせる訳には いかなかった。
  何とか先輩を押し留めた僕は、格納庫へ向かう。
  格納庫には、シャマが居た。
  彼も また、白長しなたきさんと共に、艦に残った一人だった。
  「レイジ」
  「シャマ?」
  「俺も護衛として付いて行くぞ」
  「嬉しいけど……駄目だよ。サーチ・ホーンばかり乗っていた僕が居ても何も出来ないけど、君なら戦力になれるんだから。今はふねを守って欲しいんだ」
  「そう、か。そうだな。……充分、気を付けろよ」
  「ありがとう。行って来るよ」
  その言葉に嘘いつわりは無い。
  彼ならば、貴重な戦力として数えられるだろうが、戦闘経験の無い僕が居た所で、出来る事など無いのだから。
  言葉には納得できても、感情では納得できていないのだろう。
  複雑な表情のまま、シャマは艦内へ戻って行った。
  乗り馴れた3号機は、案の定というか、複座型コックピットに換装されている。
  中を覗くまでもなく、後部座席に美緒さんが乗っている絵が想像出来た。
  「……今回は本当に、危ないんだよ? 艦で待ってて欲しいな」
  キャノピーを開きながら、なるべく優しく語り掛ける。
  ヘルメットを掻き抱く美緒さんが、首を横に振る。
  「死んでしまう事だって、あるかも知れないんだよ?」
  少しだけ、語気を強める。
  だが、それでも美緒さんの気持ち、いや、決意は、変わらなかった。
  (死んでしまうとしても、ううん、それなら尚更、一緒に居たい)
  「……そっか。判った」
  正直、嬉しかった。
  そして、ここまで言われて、腹をくくれないような奴には、なりたくなかった。
  僕にとっては、最後の意地だった。
  いや、もしかしたら、気持ちを保つ為には、この方が良かったのかも知れない。
  彼女を守る為には、死ぬ訳には いかないのだ。
  艦を発進し、一路 第三惑星を目指して一直線に飛ぶ。
  作成されたプランとしては、先ず、衛星を偵察。
  衛星に人工の施設等が存在しない事を確認した上で、その影に隠れ、第三惑星を偵察する手はずになっていた。
  「月が……見えた!」
  思わず月と言ってしまったが、多分、“第三惑星の衛星”という辺りが、そう口走らせたのだろう。
  高まった緊張感とは裏腹に、偵察は拍子抜けする程あっけなく終了した。
  衛星には人工物の欠片かけらすら無く、惑星に至っても、人工衛星が数個、軌道上を巡るのみだったのだ。
  帰艦した僕等だったけど、僕は蓄積した緊張のせいか、腰砕けになってしまい、何とか格納庫の通話機から、状況を艦橋へ伝えるのが精一杯だった。
  この後、念の為 人工衛星の軌道を避ける形で、侵入経路とタイミングが計算されて、G・サジタリアスは大気圏突入を開始した。
  艦のインパクト・ドライブが、まだ機能してくれていた――もっとも、インパクト・ドライブが機能しなくなれば、ふねは全く進まない訳だが――お陰で、多少 艦体が焦げは したものの、大気圏を突破する。
  「おぉ……」
  大気圏を抜けたG・サジタリアスの眼前には、夕陽に照らされ、オレンジ色に染まる、見渡す限りの大海原が広がっていた。
  こんな状況でなければ、しばらく眺めていたい景色なのだが……。
  「なるべく制動は掛けるけど、着水から そのまま潜水に入ります。全員、衝撃に備えて下さい」
  艦内放送で注意を呼び掛けると、先輩は艦の挙動調整に取りかかる。
  あまり派手な事をする訳には いかないが、さりとて時間を掛けては、それだけ発見される可能性も高くなるだろう。
  艦首から惑星大気圏へ突入したG・サジタリアスは、その姿勢のまま、海面へ突き刺さっていった。
  インパクト・ドライブの副次効果によって、流体制御された海水が、迎え入れるかの如くに道を空け、G・サジタリアスの巨大な艦体が、見る間に海中へ吸い込まれていく。
  多少 派手目に水しぶきを上げながらも、この質量の物体が着水したとは思えぬ程 静かに、艦体全てを海面下へ没した。
  大洋に出来た波紋は、沈んでいく夕陽の中で、ゆっくりと消えて行った。

  ペルムス星系の第三惑星、カロン――
  ウォンに導かれ、この星へ侵入したG・サジタリアスは、その広大な大海原に身を沈めた。
  その推測は正しかったようで、追跡の手は途切れたようだった。
  ただそれも、いつまで続くかは、保証の限りではない訳だが。
  海中に身をひそめたG・サジタリアスは、度重なる包囲突破の中で受けた損傷の、修復作業を進めていた。
  とは言え、ツール モジュールは1組しか存在しない為、シモンがツール・ホーンで行う補修作業を、優輝と志賀が、2機のコスモ・フラッパーで資材を運ぶ事でサポートするのが関の山だった。
  「うぅっ、動き辛いな」
  運動性に長けたツール・ホーンは ともかく、人型マシンであるコスモ・フラッパーは、重力下での運用の可能性を、ある程度 無視されている。
  それが、陸上どころか海中に居るのだから、尚更、ではあった。
  そもそも、作業用としても戦闘用であっても、マシンが人の形をしている時点で、非効率的ではある。
  意味が無いのだ。
  単純明快、嵯峨のかたよった趣味嗜好しこうの生み出した物に過ぎないゆえであった。
  「フー、これで全部 直したですかネ?」
  『シモンさん、下部 第三艦橋の付け根に 破損箇所が残ってますよ』
  一息ついたシモンに、ソウマの通信が追い討ちを掛ける。
  「ヒィー……了解ネ」
  乗り手の気分を反映したかの様に、ひょろひょろと艦底部へ移動するツール・ホーン。
  球体コックピットの横を、魚群が通り過ぎて行った。
  「……ムニエ〜ル……食べタイ……」

  応急修理を終えたG・サジタリアスだったが、迂闊うかつに動く事も出来ず、カロンの海底に沈んだまま、嵯峨の行方や、艦を降りた者達の情報が得られないものかと、連合の通信を傍受ぼうじゅしていた。
  しかし、これといった得る物も無く、時間だけが過ぎて行く。
  「……なぁ優輝〜〜」
  「うん、言いたい事は判るから」
  べったりと、舷窓に張り付きそうな勢いで、海中に見入る志賀。
  見開いた目は、心なしか血走っていた。
  その向こうには、見た目は地球の物と ほとんど変わらない魚達が、群れを成して泳いでいる。
  今にもよだれを垂らしそうな志賀を見兼ねて、優輝は急いで格納庫へ向かった。
  「シモンさんっ」
  「ドーシマした? ユーキサン」
  「電磁捕獲ネット弾、1つ取り出したいんですが」
  「?」
  ツール・ホーンには、対デブリ用に、電磁捕獲ネットを内蔵した弾頭が装備されていた。
  取り出した弾頭を手際良く ばらし、中のネットをコスモ・フラッパーの両腕の間に広げて取り付けると、そのまま海中へ出て行く優輝。
  どこで そんな知識を身に着けたものやら、戻って来たコスモ・フラッパーのネットには、大小取り混ぜ十数匹の魚が乗っていた。
  『まさか、こんな使い方をするとはね』
  「暴れれば暴れただけ、鮮度が落ちるって聞いた事があったので」
  『それで、電気刺激ショックかい? 良く考え付くものだなぁ』
  「サカナ〜〜」
  「サカ〜ナ〜」
  「うわっ!?」
  目を血走らせた志賀の隣に、これも目を血走らせたシモンが並んでいた。
  「お、落ち着いて二人共! すぐ調理するから!」
  優子と奈美の手で、料理に姿を変えた魚達は しかし、10分と掛からず皿の上から消えた事は、言うまでもない。
  いつ以来か判らなくなる程 久々の新鮮な食材に、少なからぬ鋭気を補充した彼等だったが、依然として状況に変化が無い事に変わりはなく。
  そんな、再び憤懣ふんまんを積もらせるしかない日々が始まろうとしていた、その日。
  その男が ふらりと戻って来たのは、海底生活が4日目を迎えようという、明け方の事だった。


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