戦いが、あった。
人同士が争う“戦争”では、ない。
20世紀の末、
それは、科学技術の
だが、それが、いわゆる“
あまりに この世界に似つかわしくない存在――魔物――を、この目で見たという老人も、居ない訳ではなかったからだ。
しかし、今となっては誰も、その真相も、真実の意味も……知る事は出来ない。
戦いは後に、
その“大戦”の折。
それこそが、西暦2263年の地球の夜空に輝く、二つ目の月なのである。
直径こそ1000km弱と、元々ある月の4分の1程であるものの、夜空に それを見いだすのは容易だった。
「ん? 地震か?」
すぐに収まった為に、男はそれ以上気に止める事も無く、夜道を去って行った。
その頃。
丁度、男が立ち止まった辺りの、1000メートル以上も地下。
謎の地下空間内では、白銀に輝く巨大な船体が、覚醒を
500メートルは あろうかという巨体を収めて
音源は、二つ。
一つは、船の駆動音らしきもの。
もう一つは、地下空間の両サイドから流れ込む、大量の水の音だった。
ゆっくりと、だが確実に流入する水は、地下空間を満たしていく。
やがて、地下空間が全て水によって満たされる。
船の両側に在り、船の支持と、船内外の行き来を担っていた人工岸壁が、壁面へ収納されていく。
その完了を待たず、船は、載っている支持台座ごと、前方の水路へと移動を始めた。
水路壁面では、船を先導するように、照明が連続して灯っていき、それが触れることで、何重にも設置された厳重な
そして、最後の隔壁が開き……深く、暗い海底が現れた。
支持台座のアームが格納され、同時に、船尾左右にある補助エンジン・ユニットが、船体を押し出す。
ぽうっ、と、何であろうか、光るものが船の前を横切っていった。
船尾メイン・エンジンに光が宿り、力強く、船は浮上してゆく。
やがて、人々は見る。
天空から常に歴史を見守ってきた、二つの月輝く夜空を、白銀の翼持つ船が翔ける様を。
月は、いつも、そこにある……。
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