PHASE_4 「星に願いを」
そうやって自分ばっかりで、他人の感情を汲(み取ろうと しないから、だんだん相手に されなくなって行くんだよ。
――“大戦”後の混乱期に嵯峨が出会った少女の言葉
*
一つの方向性が指し示された事で、優輝達は再び動き出した。
「駄目なんか……?」
少なくとも、エネルギーの充填が成功した事は確かだった。
開く気配は ないものの、優輝達の前にある扉(は、操作に反応して作動音を立てたのだ。
「……慌てないで、志賀。動力が戻っていたとしても、艦体が かなりのダメージを受けてるんだ。単に歪んで、開かないだけかも知れない」
「優輝。私、他の所、試してみるね」
「ん、頼むね、奈美。志賀も、別の所で試してみてくれないか。僕は もう少し、ここを見てみるから」
「判ったぜ」
再び辺りが明るくなると同時に、優輝達は艦内へ進入すべく、ハッチの開放に取り掛かる。
出て来た時に開けた扉から入れたなら、このような手間は不要だったのだが、優輝達が街へ行っている間に、第三艦橋周辺の地盤が崩落を起こしたらしく、近付けなくなっていたのだ。
ざっと見積もって、艦の2/5以上が宙に浮いている計算になる。
概(ね、艦中央より後方に重心の存在するG・サジタリアスの事。
恐らく、艦首の衝角(が大地に めり込んで いなければ、既に今頃、艦は大陸の外へ漂(い出していただろう。
第一目標は、艦内の医療設備へ到達し、御堂を治療する事。
第二目標は、動かせるならば、艦を より安定した地形へ移動させる事だった。
しかし、想像以上に深刻なダメージを受けている艦体を、果たして動かしても良いものか。
神殿は大陸の あちこちに分散配置されており、ゴウズから受け取った地図から考えるに、徒歩で巡っていては、気の遠くなるような日数が必要になりそうだった。
可能であれば、艦(で移動するのが もっとも効率が良いのは言うまでも なかったが、さりとて無理をして何かがあれば、それこそ元も子もない。
艦載機を使うにしても、中破し、修復も ままならぬコスモ・フラッパーでは、如何(とも し難い。
デリバリー・ライナーが在ればベターだったのだろうが、生憎(レイジ達が乗って行ってしまった。
仕方無く、クエーサーホーンに急造のカーゴ スペースを取り付け、急場を凌(ぐ事になった。
ホーン・ド・コアも4機 残っては いたが、航行能力の点で不適当だった。
推定される移動距離からして、出先で燃料切れを起こすのは目に見えていたからだ。
ともあれ、まず艦内に進入 出来なくては、話が始まらない。
加えて、いかに この空間が時間の概念を喪失(しているとはいえ、いつ何時(、御堂の容態が急変しないとも限らない。
事は急を要した。
開かないハッチの前で、それを睨む優輝。
(作動音確認、エネルギー伝導に問題は無い筈。となれば、目視では判らない歪みが発生しているのか……。落ち着け。“慌てず、急いで、正確に”だ)
艦の底部全体で見た時、唯一、大幅に出っ張った構造になっている第三艦橋。
それが宙に浮いた事で、そこから前の艦底部は、全体的に ほぼ接地していた。
現在 優輝が居るのは、崩落し、新たな大地の縁となった場所から、数メートル。
危険では あったが、内部の通常区画に、もっとも近い。
「すまない、ね、優輝、君」
「何を仰(ってるんです。当然じゃないですか。それに……そんなに真っ当な理由ばかりでも ありませんから。父さんの居ない今、縋(れるものなら、何でも縋りたい状況なんです」
少し離れた場所から、仰臥(したままの御堂が詫(びて来るが、それだけ喋って咳(き込んでしまう。
街までは距離があった為、二度手間を恐れて、急拵(えの担架で運んで来たのだ。
「! ここだ……!」
角度を変えては多方向からハッチを眺め回していた優輝が、ハッチへ向かい渾身(の蹴りを繰り出す。
モーターの駆動音らしきものが微かに響き、半分ほどだが、ハッチが開く。
「やった……!」
大声で他の者達を呼ぶと、力を合わせてハッチを押し開き、急ぎ御堂を運び込む。
進入さえ出来れば、居住区画の端に在る医務室へ辿り着くのは容易だった。
だが、外郭部の扉へ動力が来ているからといって、医務室へも動力が来ているのか、その医療機器群に異常は無いのか、確約がある訳もない。
分(の悪い賭けは、未(だ続いていると言って良かった。
果たして、扉を開けると そこには、暗闇が広がっていた。
「うっ!? まさか――」
「しまった、エネルギーの節約をした時に、医務室への動力供給もカットしたんだった」
最悪の展開――医務室 機能の損壊――か、と思われたが、優輝が すぐに思い出す。
「うおいッ、早く艦橋行って、動力 回して来ねえとよ!」
もっともな志賀の指摘に答えたのは、しかし、優輝ではなかった。
医務室への動力が復活したのか、不意に室内の照明が蘇る。
「え? 何故……」
「優輝! 今は!」
「ッ、そ、そうだね」
とにかくも治療(寝台(へ御堂を寝かせ、治療を開始する。
部分的な破損を危惧していたが、一先ずの所、システムは正常に機能しているように見えた。
「ふう……。後は待つだけ、だな」
「次は、艦(を どうにかして、安定させないと。移動 出来れば良いんだけど――あっ」
「ん? どうした優輝」
「何で こんな事にも……」
ここまで気付かなかった、己を呪う優輝。
当初は、可能であれば もう少し安定した内陸側へ移動させ、着陸するつもりだったのだが、艦載機を使用する以上、それを外へ出さなければ話にならない。
通常のモジュール換装であれば、艦上部のカタパルトから発進する事が出来るのだが、今回は、機体に想定外の手を加えて運用する事になる。
上部カタパルトからの発進は、不可能だった。
となれば、後は格納庫から直接、“艦底部の”扉を通るしかない。
それは明らかに、着陸していては無理のある話だった。
では、どうするのか。
瞬時に考えを まとめた優輝が、艦橋へ赴(き行ったのは、現在位置で艦を固定しつつ、安定性を増す方策だった。
艦首左右から射出された物体が、チェーンを曳(きつつ飛行し、優輝からの操作に従って姿勢制御用噴射口(が火を吹き、急激に向きを変え、大地に突き刺さった。
余ったチェーンが引き戻され、張り詰める。
これで当面の安定は確保された、筈だった。
*
一段落は したが、一息吐(く間もなく、優子、ウォンが食材の確保に向かい、ゴウズも加わった残りの4人は、ホーン・ド・コアの改造に取り掛かった。
ここで、ツール・ホーンが無傷で残っていたのが、功を奏(した。
志賀が操るツール・ホーンが主作業を引き受け、ゴウズが構造力学の観点からサポートする事で、優輝の指揮の下、格納庫の中では、急ピッチで作業が進む。
やがて、大量の食材を抱えた2人が戻り、作業の終了を見計らうかの様に、ウォンが改造作業組を呼びに来る。
いつ以来かの、――簡素でない、という意味で――まともな食事を腹に収めた一同は、休息を挟んで、艦内で治療中の御堂を除いた全員が、カーゴ スペースを組み付けられたクエーサーホーンへ乗り込んだ。
「ゴウズさん、良かったんですか? 同行して頂けるのは、有り難いですが……」
「何、年寄りの気紛(れだ。使えるものは年寄りでも使っておけ、少年」
「……判りました。頼りにさせて貰いますよ」
「まずは、ここへ向かってくれぬか。現状を確認しておきたい」
「了解です」
ゴウズの示した地図上の点へ向けて、カーゴ・ホーンと銘打たれたクエーサーホーンが発進する。
「これって……。まるでバベルの塔だね」
「うん。イラストは、描き手によって多少違ったけれど、ほとんど同じものに見えるね」
それは、広大な街区の北西数キロに 聳(え立っていた。
直径からして、1キロは ありそうな、円筒構造物。
高さも同様、1キロ近くあるように見えた。
これだけ巨大な塔が、街から見えなかったのは解(せない所だったが、街そのものとて平坦(ではない事と、塔のある辺りへ向かって、かなり土地が傾斜している事を合わせれば、納得もいった。
「……やはり、伝わっておったか」
「う?」
「後世に如何(に伝わっているかは知らぬが、恐らく そのバベルの塔とやら、我等の建造した この塔が元となっておるのだろう」
「へえ。じゃあ、コトバがバラける前の、統一言語ってのも、アトランティスの言語の事なんかな?」
「かも知れないね。そうでなければ、ゴウズさんと会話が成り立つ筈がないし」
「塔と言ったが、これは この大陸の動力炉なのだ。これが未(だ動いている お陰で、我等は存在を許されている」
カーゴ・ホーンを塔の脇へ着陸させ、一同はゴウズを先頭に、塔――巨大な動力炉――の内部へ踏み入る。
街区の建築物は、純粋に石材で築(かれていたが、この塔を構成する物質は、石のようにも、金属のようにも見えた。
短い通路を抜けると、そこは円形の小さなホール状の空間になっており、中央に石(碑(が一つあった。
石碑には碑(文(が彫られており、それは“時の道標(に従いて進むがよい”と読めた。
「?? 何のこっちゃ?」
「少年、済まんが、壁際に進んでくれぬか。壁に沿って部屋を一周してくれ。他の者は中央へ集まってくれ」
首を傾げる志賀を よそに、優輝に、一同に告げるゴウズ。
「部屋を一周……。時の道標……。なるほど、そういう事ですか」
言われた通り、優輝が壁際を一周して戻ると、つるりとした壁面のせいで判別は し辛(かったが、ホールそのものが上昇を始めたような感覚があった。
地球のエレベーターと違い、動きが非常にスムーズな事も、感覚を不確かな物にしていた。
ややあって浮揚(感が消えると、小さかったホール状の空間が、一回り広くなった。
そして今度は、左右と正面に計三つ、据(えるべき彫刻を失ったかのように、台座のようなものだけが、鎮座していた。
三つの台座と、その奥の壁――見ように よっては扉に見えない事もない――にも、やはり それぞれ、碑文が彫られていた。
複雑な形状の窪(みを有する、左右の台座。
左にある台座には“天使の涙を捧(げよ”と。
右にある台座には“獣(の王の証を示せ”と。
窪みの無い正面の台座には“天使と獣王に認められし者が大地との絆(を結(び繋(げる”と。
そして奥の壁面には“絆こそが緋色の神に至る道である”と。
「天使の涙と、獣の王の証。それは、神々の遺産などと、大仰(な名を冠されてはいるが、ようはプレート状の鍵(、制御板だ。かつて狂神の都と呼ばれた、遺棄(された地方に散在する、遺跡群の何(れかに隠されておる」
ゴウズが説明を加えるが、優輝は その違和感に、直ぐに気付いた。
「正確な場所は判らないんですか? いや……それ以前に、ここは この大陸船の動力炉なんですよね? 何故、制御室に至る鍵が、行方不明(に?」
「……情けない話だが、反乱が起きてな。その一派によって制御鍵板(が持ち出され、実質 制御不可能になった。狂神の都などと呼ばれたのも、彼らが拠点としていたのが理由だ」
「反乱が起きている最中に、この空間へ?」
「鎮圧 出来ていれば、キー プレートは回収された筈、と読んだか。だが鎮圧は完了していたのだ。鎮圧までは、な」
「回収は出来なかった。つまり、何か障害があった訳ですね」
「話が早くて助かるよ、少年。彼らは反乱を起こすに前後して、一部の神殿群の要塞化を進めていたのだ。鎮圧には成功したものの、むしろ回収で多くの犠牲者を出してしまってな……。この空間に落ちたのは、その頃の事だ」
「要塞……」
「要塞て、そんなもんを俺らで攻略しろってのか?」
希望と共に意識も遠のくような錯覚(を覚える優輝。
しかし、志賀の言葉を端緒(として、ある可能性に至る。
「あの、ゴウズさん。要塞というのは、どのようなものなんですか?」
「む?」
そこから よくよく話を聞いてみると、優輝達がイメージするようなものではなく、各所に侵入者を撃退する為の罠(が設置された、それは むしろ迷宮(と表す方が正確と思えた。
それも、元が神殿だけに、然(したる広さもないと聞けば、何とか なりそうな気もして来る。
「そこだ。改めて問うが、我々は多くの犠牲を払って、尚( 取り戻せなかった。それでも行くのかね?」
「行きます。僕達は、こんな空間(で燻(っている訳には いきませんから」
言外(に、危険である事を示唆(するゴウズに、迷う事なく即答する優輝。
「そうか……。ならば、何も言うまい。して、先ず どこへ向かうかね。要するキー プレート2枚に対して、候補となる神殿は倍以上の数が あるが」
「…………」
ゴウズの言葉に、暫し地図に目を落とし、黙り込む優輝。
指し示したのは、丘陵と思われる描き方を された辺りだった。
「ここを、目指しましょう」
話し合う間に、カーゴ・ホーンまで戻っていた一同は、そのまま丘陵地に在ると思われる神殿を目指し飛び立った。
*
小一時間も飛ぶ頃には、周囲は なだらかな丘が続く地形になっていた。
これで木々が生い茂っていたならば、探索は困難だったろう。
だが木立は まばらで、下草もほとんど生えておらず、神殿を発見するのは容易だった。
「こりゃまた、随分ボッロボロだなあ」
「だけど……同じ地球人の造った建造物とは思えないな。様式も規模も違い過ぎる」
志賀の言葉の通り、辿り着いた神殿は、朽ち果てているという表現がしっくり来る程に、崩れかけたものだった。
更に、優輝が言うように、建築様式は地球のものとは似ても似つかず、その規模に至っては、内部に一つの都市が構築できるのではないかと思える程であった。
入り口近くに着陸し、内部へ侵入すると先(ず、野球場程は あろうかという広間が現れた。
「広いな……」
「建立(された当時は、ここで参拝客が過ごしていたのだろうな」
「……ん? 地鳴り……?」
志賀とウォンのやり取りを よそに、優輝が僅かな揺れに気付く。
当初ごく小さな揺れだったそれは、直ぐに、はっきりと全員が認識できる程に強くなった。
「なな、何だ、地震か!?」
「そんな筈は ないだろう。ここは切り取られた浮遊大陸だぞ」
「いかん、思い出したぞ。皆(、走るのだ!」
言うや否や、齢(数百とは思えぬ健脚を見せ、駆け出すゴウズ。
他の者も、慌てて それに続く。
立ち止まったゴウズの周囲へ全員が辿り着き、振り返ると、床を構成していた構造材が、広範囲に亘(って崩落していた。
暫く呆然と、巨大な縦穴を眺める一同。
「おいおい……帰り道、無くなっちまったぞ」
「問題は無い。見ておれ」
皆の気分を代弁する志賀に、請け負ったゴウズの言葉が終わるや、再び地鳴りが始まり――
バラバラと浮き上がり戻って来た構造材が、縦穴の中央に吊り橋のような細い道を造り出す。
「……帰り道は、出来たみたいだね」
「すまんな、少年。何せ1万年も昔の話だ。記憶も おぼろげでな」
「は、はあ。さすがに仕方ありませんよ。でも助かりました」
初手から派手な歓迎を受けた一行だったが、その後も各人の得意分野を駆使し、何とか切り抜け、最深部へと到達する。
学校の教室程度の広さの空間に、バベルの塔にあったものと似た台座があった。
「あそこにあるのか。……ん?」
台座の前に、ふやけたミカンの様にも見える、何かが あった。
ただし大きさは、猪(並みだったが。
しかし、近寄り、よくよく見ると、それは……人、であった。
ごくり、と誰かが唾(を飲み込む音が、嫌に大きく聞こえた。
「……! お主(は――」
見覚えがあるのか、ゴウズが語り掛けると、人だった物体が震え、反応する。
「……お……オ……ゴ、うズ、さマ……。よ、ウヤく……きー、プれー、ト……手ニ……入、レ、まシ……」
「この様な姿と なってまで、辿り着いていたか。……ご苦労だった、ゆっくり休んでくれ」
「ア、あ……有り、ガた、き……お、こトバ……」
苦労が報(われ、気力を使い果たしたのか、物体は、それきり動く事は なくなった。
「…………」
「我等は――どこで道を誤(ったのだ?」
小さく呟かれたゴウズの その言葉に、答えを返せる者は無かった。
キー プレートを回収し、再び入り口の、吊り橋状と化したホールまで戻って来た一同。
中程まで渡った所で、しかし、違和感を覚え、何気(なく頭上を見上げた瞬間。
「ッ!?」
頭上遥か上方、天井が剥(がれでもしたか、こちらへ真っ直ぐ落ちて来る。
明らかに、どうにかなる質量(ではない事は、瞬間的に理解できた。
そして、この位置では、避ける事も出来ない。
元々 朽(ちかけた神殿とはいえ、余りにもタイミングが良過ぎる。
これもトラップの一部だったのだろう。
「うわああッ!」
岩塊の下敷きになり、未来への希望も、自分達自身も、文字通り全てが潰(えるかに思われた。
思わず顔を覆い、屈(み込む一同。
その耳に、激しい破砕音が届く。
そして、幾ら待っても訪れない圧潰(死を訝(しみ、顔を上げると――
「やあ、何とか間に合ったかな?」
そこに立っていたのは――
「えっ、そ、ソウマさん!?」
透き通った輝きを放つ、水晶で出来たような剣を携(えた その男は、立体映像として ずっと見て来た、ソウマに違いなかった。
だが、今、目の前に立つソウマは、映像ではない。
明確な実体を伴(っていた。
「一体、何が どうなって……?」
「とにかく、出よう。話は それからに」
言って、周囲を見回すソウマ。
トラップに よるものなのか、トラップの副次的な影響なのか、それは判らなかったが、鳴動は続いていた。
一行は急ぎ、神殿の出口を目指す。
脱出した直後、神殿は跡形もなく崩れ落ち、瓦礫(の山となり果(ててしまった。
「危機一髪、だな」
「ソウマさんが来てくれなかったら、どっちみち今頃、あの下敷きかよ……ブルブル」
入り口から噴き出して来た砂埃(を浴び、煤(けた頬に伝い落ちる汗を、怖(気(を震(いながら、手で拭(うウォンと志賀。
「よくは判りませんが、ありがとうございます、ソウマさん」
「あ、先に謝っておくね、ごめん」
「え?」
謝辞を送ると同時に謝罪されて、面食らう優輝。
ソウマが指す先へ視線を巡らすと、そこには不時着――いや、ほぼそのまま神殿の壁に突っ込んだのだろう、大破したブースト・ホーンが ぶすぶすと黒煙を上げていた。
「…………」
「いや、急いだ方が良い気がしてね、それでブースト・ホーン(で飛んで来たんだけど、止まり切れなくてね。ははは」
ソウマの、あまりに次元の違う感覚に、呆気にとられるしかない優輝達だった。
「う、いや、まあ、ホーン・ド・コアは仕方ないとして。ソウマさん、その身体は……」
「ああ、これかい? ちょっと長い話になるけど、良いのかな?」
「そろそろ夜に替わる。休息を取るには丁度良いのではないか」
ゴウズの言葉に、一旦散り、皆で休息を取る用意に入った。
枯れ木や下草が集められ、焚(き火が焚(かれる。
「艦内のどこにでも、瞬時に現れる事が可能な僕が、どうして居ない時間が長かったのか。不思議に思った事は ないかい?」
「それは……ありますが」
「その間はね、メイン コンピュータの人工知能の、教育係を やっていたのさ」
浮遊大陸への不時着と同時に、一旦(はエネルギー残量ゼロとなったG・サジタリアス。
光圧駆動回路にとって、エネルギーの充填に必要な物は、光源、それのみ。
御堂を助けるべく、エネルギーの回復を試みた優輝達。
そして、僅かとはいえエネルギーの充填が行われた事で、もう一つ、動き出していたものがあった。
「不時着の衝撃で、回路から外れてしまった僕の核(を、彼が培養(槽へ入れてくれてね。嵯峨の方でも準備は してくれていたみたいで、彼の時とは比べ物に ならない長い時間こそ掛かったけど、こうして僕も、実体を得たのさ。もっとも、嵯峨と違って、無(尽蔵(のエネルギーという訳には いかないけどね」
「俺は てっきり、ソウマさんが人工知能なんだと ばっかり思っていたぜ」
「いや……少なくとも それは違うって、説明したでしょ、志賀」
「そ、そうだったか? なんつーか、話がヤヤコシくて いけねえよ」
僥倖(にも恵まれ、第一の神殿で、1枚目のキー プレートを手に入れた優輝達は、旅の道連れにソウマを加え、勇(んで次なる神殿へと向かうのだった。